家族と片付ける ― 「誰の物か」ではなく「どこに、いくつ」で線を引く
同居している家族と揉めるのは、たいてい「誰の物か」から話を始めたときです。持ち主を特定しても、その人が手放すとは限らないので、そこで止まります。
決めるのは、置く場所と量です。共有スペースに置いてよい物の種類と量を先に決めて、はみ出した分は持ち主の場所へ移す。この形なら、相手の物に手を付けずに共有スペースが片付きます。個人の物は、最後まで本人が決めます。
共有スペースと個人の場所を、先に分ける
家の中を、二つに分けて考えます。全員が使う場所と、個人の場所です。ここを分けないまま話すと、片付けの話が人柄の話にすり替わります。
全員が使う場所は、リビング、ダイニング、玄関、洗面、廊下、台所。ここは、置いてよい物と量を全員で決めます。個人の場所は、それぞれの部屋、自分のクローゼット、自分の引き出し。ここには手を出しません。
分けるときに大事なのは、個人の場所を全員に用意することです。置く場所がない人は、共有スペースに置くしかなくなります。部屋がない場合でも、棚一段でも引き出し一つでも構わないので、「ここはあなたの場所」と決まっている範囲を作ります。
共有スペースのルールは、三つだけ決める
細かく決めるほど守られません。決めるのは三つだけにします。
- 置いてよい物/その場所で使う物だけを置く。使う場所と置く場所が離れている物は、共有スペースに残りやすい
- 一人あたりの量/棚一段、かご一つ、というように場所で決める。個数ではなく場所で決めると、判定が要らない
- はみ出したときにどうするか/持ち主の場所へ移す。捨てるとは決めない。捨てることを含めると、合意が取れなくなる
言い方を変えるだけで、通ることがある
同じ内容でも、切り出し方で受け取られ方が変わります。片付けの話は、相手の生活のしかたへの評価として伝わりやすいためです。
いつになったら片付けるの
今週の土曜の午前、二時間だけ一緒にやりたいんだけど、都合はどう
「いつ」を相手に投げると、答えは先送りになる。日時と長さをこちらから出すと、可否の返事になる
これ、もう使ってないよね。捨てていい?
これ、この一年で使った場面ってあった?
「捨てていい?」は、その場で手放す判断を迫る問い。使った場面を聞くと、事実の確認になるので答えやすい
物が多すぎる
この棚に入る分にしたいんだけど、どれを入れる?
量の多さを指摘すると、相手の性格の話になる。入る場所を示すと、選ぶ作業の話になる
私ばっかり片付けてる
ゴミを外に出すのだけ頼めると助かる
不公平の指摘は、相手を防御に回らせる。判断の要らない作業を具体的に頼むと、引き受けてもらいやすい
相手によって変わるところ
同じ家族でも、立場によって効く進め方が違います。
| 相手 | つまずきやすい点 | 進め方 |
|---|---|---|
| 配偶者・パートナー | 片付けの基準が違うことを、価値観の違いとして受け取られる | 共有スペースの量だけを決めて、個人の物には触れない。基準をそろえようとしない |
| 子ども(小さい) | 選ばせても決められず、作業が止まる | 選択肢を二つに絞って聞く。量の上限(この箱に入る分)を先に見せる |
| 子ども(大きい・独立した) | 本人の物が実家に残ったまま | 期限を決めて連絡する。取りに来られない場合は、送るか、処分の可否を確認する |
| 同居の親 | 自分の判断で動かすと、その後の協力が得られなくなる | 共有スペースから始める。親の物は本人の同意を取ってから |
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実家の片付けの進め方同居していない親の家を片付ける場合は、同意の取り方から変わります。
協力が得られないときの進め方
話しても動いてもらえないことがあります。そのとき、説得を続けるより、自分の範囲を先に終わらせる方が結果につながることがあります。
自分の物と、自分が判断してよい共有物を片付けます。片付いた状態が家の中にできると、比較の対象ができるので、話が具体的になります。「片付けよう」ではなく「この棚と同じようにしたい」と言えるようになります。
それでも変わらない場合、片付けを一人で引き受け続けることの負担を、先に考えてください。全部を自分でやり続ける形にすると、家族にとっては散らかしても誰かが直す状態が続くので、変わる理由がなくなります。手を止める場所を決めるのも、一つの選択です。
相手の物を、自分が動かしてよいか
動かさない
原則こちら。明らかなゴミに見えても、本人に確認する。一度でも勝手に捨てたことが分かると、その後は共有スペースの片付けにも協力が得られなくなる
場所だけ移す
共有スペースにはみ出しているとき。捨てずに、持ち主の場所へ移すだけにする。移したことは伝える
一緒にやるか、別々にやるか
別々にやる
基準が合わないとき。同じ物を目の前にして議論すると、一つの物に何十分もかかる。範囲を分けて、それぞれの範囲を自分で決める
一緒にやる
共有スペースの量を決めるとき、大きい物を動かすとき。判断が要る場面ではなく、決めごとと力仕事の場面で一緒にやると噛み合う
家族と片付けるときのよくある質問
夫(妻)が物を捨ててくれません
捨てさせようとする限り、話は進みにくくなります。共有スペースに置ける量だけを決めて、その中に何を入れるかは本人に選んでもらってください。個人の場所を用意して、そこは自由にしてもらいます。量の話は場所の話に置き換えられるので、価値観の対立になりにくくなります。
子どものおもちゃが片付きません
入れ物を先に決めて、そこに入る分だけにする形が向いています。「どれを捨てる?」ではなく「この箱に入る分を選んで」と聞くと、選ぶ作業になるので答えられます。小さい子には選択肢を二つに絞って聞いてください。捨てる場面を見せると抵抗が強くなるので、選ばれなかった物は別の場所に移して、しばらく置いてから処分するかを決めます。
自分だけが片付けていて、疲れました
全部を引き受け続ける形は、続きません。頼むときは、判断のいらない作業を具体的に頼んでください。ゴミを外に出す、箱を運ぶ、粗大ごみの申込みを調べる。「片付けを手伝って」だと、何をすればいいか分からないので動いてもらえません。それでも動いてもらえない場合は、自分がやる範囲を決めて、その外側は手を止めることも選択肢です。
家族と片付けの基準が違います
そろえる必要はありません。基準をそろえようとすると、どちらが正しいかの話になります。決めるのは、共有スペースの量と、個人の場所の範囲だけです。その中でどう持つかは、それぞれが決めます。共有スペースが片付いていれば、家全体としては回ります。
独立した子どもの荷物が実家に残っています
期限を決めて連絡してください。「いつか取りに来て」では動きません。日付を示して、その日までに取りに来られるか、送ってよいか、処分してよいかを聞きます。連絡が取れない場合や返事がない場合でも、本人の物を勝手に処分すると後で揉めることがあります。返事を待つ間は、量が分かる形でまとめて保管しておいてください。
この記事の親ページ
家の片付けの進め方|どこから始めて、どの順番で終わらせるか家全体を片付けるときの順番と、途中で止まったときの立て直し方をまとめてあります。
家族と片付ける ― 「誰の物か」ではなく「どこに、いくつ」で線を引くについて詳しく
このページは「家族と片付ける ― 「誰の物か」ではなく「どこに、いくつ」で線を引く」を扱い、家族と片付けるときに揉めにくくする考え方をまとめたものです。同居している家族と揉めるのは、たいてい「誰の物か」から話を始めたときです。持ち主を特定しても、その人が手放すとは限らないので、話がそこで止まってしまいます。
家族と片付けるときに決めるのは、置く場所と量です。共有スペースに置いてよい物の種類と量を先に決めて、はみ出した分は持ち主の場所へ移します。この形なら、相手の物に手を付けずに共有スペースを片付けられ、個人の物は本人が最後まで決められます。持ち主を探すより、置く場所と量を話題にする方が、話し合いが前に進みやすくなります。
家の中は、全員が使う場所と個人の場所の二つに分けて考えます。全員が使う場所は、リビング、ダイニング、玄関、洗面、廊下、台所です。ここでは置いてよい物と量を全員で決めます。個人の場所は、それぞれの部屋、自分のクローゼット、自分の引き出しで、ここには手を出しません。部屋がない場合でも、棚一段や引き出し一つで「ここはあなたの場所」と決まっている範囲を作ってください。置く場所がない人が、共有スペースに物を置くしかなくなるのを防げます。
進め方と注意点
家族と片付けるときは、共有スペースのルールを三つだけ決めます。細かく決めるほど守られにくいので、置いてよい物、一人あたりの量、はみ出したときにどうするかの三つにとどめます。量は個数ではなく、棚一段やかご一つのように場所で決めると、いちいち判定しなくて済みます。はみ出した物は持ち主の場所へ移すだけにして、捨てることは決めないでください。捨てることを含めると、合意が取れなくなります。また、同じ内容でも切り出し方で受け取られ方が変わります。「いつになったら片付けるの」と相手に投げると答えは先送りになるので、「今週の土曜の午前、二時間だけ一緒にやりたいんだけど、都合はどう」のように、日時と長さを先に出してください。
相手の物は、原則として動かさないでください。明らかなゴミに見えても、本人に確認します。一度でも勝手に捨てたことが分かると、その後は共有スペースの片付けにも協力が得られなくなります。共有スペースにはみ出しているときだけ、捨てずに持ち主の場所へ移し、移したことは伝えます。相手によって進め方も変わります。配偶者・パートナーには共有スペースの量だけを決めて個人の物には触れず、小さい子どもには選択肢を二つに絞って聞きます。独立した子どもの荷物が実家に残っている場合は、期限を決めて連絡し、取りに来られないときは送るか、処分してよいかを確認します。同居の親には共有スペースから始め、親の物は本人の同意を取ってから動かします。同居していない親の家を片付ける場合は、同意の取り方から変わります。
進めるコツ
家族と片付けるときは、一緒にやるか別々にやるかを分けると進みやすくなります。基準が合わないときは、同じ物を目の前にして議論すると一つの物に何十分もかかるので、範囲を分けてそれぞれが自分で決めてください。一方で、共有スペースの量を決めるときや大きい物を動かすときは、判断より決めごとと力仕事の場面なので、一緒にやると噛み合います。手を借りにくいときは、「片付けを手伝って」ではなく、ゴミを外に出す、箱を運ぶ、粗大ごみの申込みを調べる、といった判断のいらない作業を具体的に頼むと、動いてもらいやすくなります。自分の物と自分が判断してよい共有物を先に終わらせると、片付いた状態が比較の対象になり、話が具体的になります。
よくある質問
- 家族と片付けるとき、夫(妻)が物を捨ててくれません。どうすればいいですか?
- 家族と片付けるときは、捨てさせようとすると話が進みにくくなります。共有スペースに置ける量だけを決めて、その中に何を入れるかは本人に選んでもらいます。個人の場所を用意して、そこは自由にしてもらうと、量の話は場所の話に置き換えられ、価値観の対立になりにくくなります。個数ではなく場所で決めると、判定の作業が要りません。
- 家族と片付けるとき、子どものおもちゃが片付きません。どう進めればいいですか?
- 家族と片付けるときも、入れ物を先に決めて、そこに入る分だけにする形が向いています。「どれを捨てる?」ではなく「この箱に入る分を選んで」と聞くと、選ぶ作業になるので答えやすくなります。小さい子には選択肢を二つに絞って聞いてください。捨てる場面を見せると抵抗が強くなるので、選ばれなかった物は別の場所に移し、しばらく置いてから処分するかを決めます。
- 家族と片付けるとき、自分だけが片付けていて疲れました。どうしたらいいですか?
- 家族と片付けるときでも、全部を自分で引き受け続ける形は続きません。頼むときは、判断のいらない作業を具体的に頼んでください。ゴミを外に出す、箱を運ぶ、粗大ごみの申込みを調べる、などです。「片付けを手伝って」だと何をすればいいか分からず、動いてもらえません。それでも動いてもらえない場合は、自分がやる範囲を決めて、その外側は手を止めることも選択肢です。
- 家族と片付けるとき、片付けの基準が違ったらどうすればいいですか?
- 基準をそろえる必要はありません。そろえようとすると、どちらが正しいかの話になってしまいます。家族と片付けるときに決めるのは、共有スペースの量と、個人の場所の範囲だけです。その中でどう持つかは、それぞれが決めてください。共有スペースが片付いていれば、家全体としては回ります。